建築基準法12条点検全面打診調査とは
建物が健全な状態で維持されているかを調べるため、建築基準法12条では一定規模以上の建築物について定期的な点検を義務付けています。この定期点検は、建築物の所有者や管理者が責任を持って行うべきものであり、建築物の安全性、衛生状態、および防火性能などが確保されているかをチェックすることを目的としています。今回はその点検項目の中でも、外壁全面打診点検について説明してきたいと思います。
外壁の全面打診調査とは
外壁の全面打診調査は、タイル・石貼り等(乾式工法によるものを除く)、モルタル等の外装仕上げ材の劣化損傷状況について、概ね10 年に一度、落下により歩行者等に危害を加える可能性のある部分について全面的な調査が義務付けられているものです。これは建物所有者や管理者の法的な義務であり、違反した場合には罰則が課されることがあります。
全面打診調査の内容
外壁のタイルやモルタルが劣化・剥落すると、剥落部の下にいる人・物に大きな被害を与える可能性があります。そのため、現状の劣化状態を把握するのが全面打診調査の目的になります。
劣化状況の状態を把握する方法としては、劣化状況を把握する方法としては、まず打診棒やハンマー等を使用して外壁全体を叩き、異常音を確認する打診法があります。異常音が確認された場合、その部分は内部が浮いている、または劣化している可能性が高いと判断されます。ただしこの方法は精度面では優れていますが、調査期間が長くなるとともに、コストも高くなるのが欠点です。
もう1つの手法が赤外線サーモグラフィ法です。これは赤外線カメラで外壁の表面温度差を検知することで間接的に対象の浮きの有無・範囲を推定する調査手法です。最近はドローンに搭載する赤外線カメラの性能も徐々に向上してきており、構造物点検への応用が広がってきている分野になります。
全面打診調査の実施者
外壁全面打診調査を実施する調査員には適正な品質を確保するために資格指定があり、一級建築士、二級建築士、または特定建築物調査員資格者証の交付を受けている必要があります。
また赤外線サーモグラフィ法を適用する場合には法律上の資格指定が無いのが現状ですが、複数の団体から赤外線調査の民間資格が発行されているので、技量判断の1つとして発注時の目安にすると良いと思います。
ドローンのフライトについても資格制度があります。今回のブログでは詳細は省きますが、ドローンパイロットの資格には国家ライセンスと民間ライセンスがあります。国家ライセンス所持者は飛行申請手続きで少し優遇される点がありますが、ドローンパイロットライセンスはドローン黎明期から民間主導で発展してきたこともあるので、民間ライセンスのみで業務を実施している会社がまだ大多数なのが現状です。どちらのライセンスが技量的に優れているかを競うものではありませんが、これも発注時の目安にすると良いでしょう。