赤外線サーモグラフィ法の基本原理と建物への応用

近年、建物の外壁調査において、赤外線サーモグラフィ法が注目を集めています。この技術は、撮影対象の表面温度を赤外線サーモグラフィカメラ(以下赤外線カメラ)で撮影し、その表面温度差から対象の状態を非接触で検出する手法で、建物調査への応用が広まっています。今回は、その基本的な原理と建物への応用について説明をしていきたいと思います。

赤外線サーモグラフィ法の基本原理

赤外線は絶対零度(-273.15℃)を除く全ての物体から、常に放射されています。赤外線カメラはこの物体の表面から放射されている赤外線を検知・可視化するカメラで、検知する赤外線の量、つまりエネルギー量は対象の温度に左右される特性があります。表面温度が高温な方が放射される赤外線の量が多く、逆に表面温度が低温になるほど放射される赤外線の量が低くなるため、その相対差を検知することで間接的に対象の表面温度差を推定する事が可能になります。相対的な表面温度差を知る事で、間接的ではありますが対象の状態を推定する事が可能になります。これが赤外線サーモグラフィ法の基本原理です。身近な例としては、病院や空港等に設置されている高体温の人間を検知する仕組みがあげられます。

建物への応用

建物への赤外線サーモグラフィ法の応用ですが、ここでは外壁調査に限定して記載していきます。外壁調査で調べる対象になるのが主にひび割れ・浮きになりますが、赤外線サーモグラフィ法を用いる事で、浮き部の推定が可能になります。日中の場合、日射による加熱により、浮きが生じている部分と浮きが生じていない部分で表面温度差が生じてきます。これは浮きが生じている箇所では僅かではありますが空気層が生じるため、その空気層が断熱の役割を果たし、結果的に浮き部の表面温度が相対的に上昇していきます。これが日中ではなく夜間の場合は熱の移動メカニズムが逆になるため、浮き部の表面温度は相対的に低下していきます。赤外線カメラによりその表面温度差を検知することで、間接的に浮きの有無や範囲を推定する手法、それが赤外線サーモグラフィ法による外壁調査の原理となります。

建物診断の原理(外壁)
参照:日本アビオニクス株式会社HP

今回は赤外線サーモグラフィ法の基本原理と建物への応用について、要点の説明をさせて頂きました。この調査手法を機動性の高いドローンに搭載できるようになったことで、今後も更に発展が続くものと考えられています。