赤外線サーモグラフィ法の精度向上に必要な条件

赤外線サーモグラフィカメラ(以下、赤外線カメラと呼称)による外壁点検は、短時間で広範囲・低コスト化・建物使用者の負担が少ない等のメリットが多数ありますが、そのメリットを最大限発揮させるには、適正な条件下で調査をする事が重要となってきます。今回は、その主要な適用条件について解説していきたいと思います。

天候条件

まず最も影響が大きい要素が天候条件です。原則として、外壁面に日照が得られて壁面が温まっている条件下でないと、精度向上がなかなか見込めません。したがって、原則としては晴天である事が求められます。過度に風速が強い場合や、雨天後の壁面が濡れているような状態でも、適正な調査条件とは言えません。天候条件がよく日照により壁面が適正に温められ、それにより劣化部とそれ以外の壁面の表面温度差が生じている状態である事が必要となります。

撮影対象

赤外線サーモグラフィ法による外壁点検に適した仕上げ材と、あまり向いていない仕上げ材があります。外壁タイルで言うと光沢のあるタイル・凹凸のあるタイル・濃淡差の多いタイル・厚みのあるタイルの場合、調査精度が通常のタイルよりも低下してきます。このような外壁仕上げ材の場合は注意が必要になります。

撮影角度

赤外線サーモグラフィ法は撮影対象(外壁点検の場合は外壁そのもの)から放射される赤外線を検知・可視化することで、間接的に対象の状態(外壁点検の場合は主に浮き)を推定する手法です。この際、撮影角度によって赤外線の放射強度が変わってくる特性があり、一定の撮影角度を超えると精度が著しく低下してくる光学的特性があります。したがって、なるべく正対して撮影する方が望ましいという事になります。この点において、ドローン搭載型赤外線カメラは機動性を活用して壁面に正対撮影できるため、有利に働く手法と言えます。

カメラ性能に応じた撮影距離

赤外線カメラに限らずデジタルカメラ等の一般的な全てのカメラに共通する内容ですが、適正な解像度を得るためには、カメラ性能に応じた限界撮影距離を考慮する必要があります。あまりに離れた距離から撮影しても、細部を捉える事はできません。ドローン搭載型の赤外線カメラは機動性が高く外壁に近接しやすいため、撮影距離の問題が生じる事はあまりありませんが、逆に言えばドローンでも近接できないような外壁に対しては、調査精度減が避けられないと言えます。

今回は赤外線サーモグラフィ法による外壁点検の精度向上に必要な条件について、主要なポイントを説明させて頂きました。実際の現場では教科書通りにいかない事もありますが、赤外線調査は原理・原則を抑えておかないと精度を担保しにくい特性があるため、常にこのような点に留意しながら調査を進めていく事が重要と考えています。