ドローンによる赤外線装置法のメリット・デメリット

建築基準法12条の定期報告制度における、赤外線調査(無人航空機による赤外線調査を含む)による外壁調査ガイドラインが令和4年(2022年)4月に施行されました。法改正内容が正式に施行された事で、赤外線の性質を活用した建築物の外壁調査事例が今後一層増加していく事が予想されます。今回は、ドローンを使用した赤外線装置法のメリット・デメリットについて、詳しく解説したいと思います。

メリット

1.短時間・広範囲

従来の調査手法である打診法(打診ハンマー等で叩いた時の打診音で浮きを判定する手法)は地道に外壁を打診していく手法ため、長い調査時間を要するのが大きな課題でした。それに対してドローンによる赤外線装置法は、ドローンで外壁面近くまで飛行し、搭載した赤外線カメラで外壁面の撮影を重ねていく手法で、完全に撮影が主となります。ある程度広い面積を一気に撮影していけるため、打診法に比べて圧倒的に短時間・広範囲の調査が可能です。

2.従来手法よりも低コスト

ドローンによる赤外線装置法は、短時間で広範囲の調査ができるほか、打診法では必要になる仮設足場も不要となる事から、従来手法の打診法よりも大幅に調査費用を削減する事が可能になりました。仮設足場費用は調査費の中でも大きな割合を占めるため、仮設足場費の削減が調査費の削減に与えるインパクトは非常に大きなものがあります。

3.建物使用者負担が少ない

ドローンによる赤外線装置法は、非接触で離れた所から調査ができる手法のため、従来手法ではどうしても必要だった仮設足場が必要ありません。仮設足場の設置・解体時は騒音の問題や安全上の通行規制が入る他、仮設足場から部屋内が見えてしまうなど、どうしても建物使用者への負担が大きいものがありました。ドローンによる赤外線調査はこの課題を改善できる優れた手法となっています。

デメリット

1.気象条件の制約が大きい

赤外線装置法は外壁表面の相対温度差(浮き範囲・浮いていない範囲では表面温度差が異なるため)を検知・可視化することで、間接的にタイルなどの浮きを推定する手法です。そのため前提として、相対的な表面温度差が明確に生じてくるための気象条件が極めて重要となります。具体的には、天候が良好で十分な日射が得られる事、表面が濡れていない事等、外壁表面を大きく冷やすような強風下でない等があります。加えてドローン自体の特性として、風速が強いと安定飛行が難しくなるケースがあるため、安定飛行のための風速条件も重要な要素となります。

2.高い技量・経験値が求められる

赤外線装置法は得られた画像データをPC上で解析することで、タイル等の浮きを推定していく手法になります。解析作業の精度を高めるには赤外線の知見が必要になりますので、誰でも容易にできるような内容の業務ではありません。

ドローンによる赤外線調査の今後

ドローンによる赤外線調査のメリット・デメリットを解説してきました。この手法には数多くのメリットがありますが、同時に様々な運用性の難しさがある事を理解して頂けましたでしょうか。ドローンによる赤外線調査は今後一層拡大していく手法であることは確実だと思われますが、だからこそ、我々は信頼性の高い調査会社を選定する事がとても重要であると考えています。